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Privacoで始めるパスワードマネージャーのディザスタリカバリ

はじめに
皆さんはパスワードマネージャーを使っていますでしょうか。私は長年1Passwordを愛用しており、様々なサービスのパスワードやパスキー、 クレジットカード番号やAPIのクレデンシャルなど様々な情報を一元管理しており、手放せないサービスの1つとなっています。
現状生活のほぼ全てを1Passwordに依存している状態のため、1Passwordアカウントにアクセス不可能になることのないよう、最後の砦となるシークレットキーを適切にバックアップしておく必要があります。 これまではGoogle Driveなど他のクラウドストレージにEmergency Kitを保管していましたが、災害等でログイン中の手持ちデバイスを全て失うと結局アクセスできない状態に陥る可能性があるため、よりいい方法はないかと探していました。
そんな中、Jxckさんの自筆証書遺言書保管制度を利用したデジタル遺産を引き継ぐ方法を解説した記事を見つけ、大変興味深く拝見しました。 この記事では、遺言書保管制度を使ってアカウント情報などのデジタル遺産を引き継ぐ方法を解説していますが、 遺言書保管制度を活用することで1Passwordアカウントのバックアップにもなるという内容を見て、「こんな方法があったのか」と衝撃を受けました。
この記事から触発され、マイナンバーカードなどの公的な身分証明書を使ってログインできるようなストレージサービスがあれば、 最悪デバイスを全て失っても1Passwordアカウントへのアクセスを回復することができるなという発想になり、使えそうなサービスがないか探していました。
そして最近、たまたまTwitterのタイムラインでPrivacoというサービスを見つけ、これなら使える!と思ったので、簡単に使い方をまとめた記事を書いてみたいと思います。
Privacoとは
Privacoは2025年7月にベータリリースされた、国産のパスワードマネージャーです。基本的な機能については他のサービスと同様ですが、 特筆すべき特徴として挙げられるのは マイナンバーカードを使ってログインすることが可能 という点です。
1Passwordを例に挙げると、1Passwordへの初回ログインにはシークレットキーとマスターパスワードが必要であり、何らかの要因でシークレットキーを紛失してしまうと、二度とアカウントにアクセスすることができなくなってしまいます。
一方、Privacoではマイナンバーカードがシークレットキーの役割を果たします。 そのため、たとえ被災して全てを失ってしまったとしても、マイナンバーカードを再発行してもらうことで、再度アカウントにアクセスすることが可能です。 この点が、災害対策としてうってつけと感じました。
Privacoではホワイトペーパーを公開しており、セキュリティ対策について詳細に説明しています。 1Passwordと同様ゼロ知識アーキテクチャを採用しており、サービス事業者側でユーザーの情報を復元することができないようになっています。
Privacoの使い方
何かしらパスワードマネージャーを使ったことがある方であれば特に混乱なく使えるかと思いますが、一応ある程度の使い方を記載しておこうと思います。
アカウント作成
メールアドレスと合い言葉(1Passwordのマスターパスワードに相当)を登録し、最後にデジタル認証アプリとマイナンバーカードで認証します。 この記事を書いている2025年9月時点では、認証に使用するデジタル認証アプリがスマホに搭載したマイナンバーカードに対応していないため、物理カードで認証を行う必要があります。
来年登場予定の新マイナアプリでは、デジタル認証アプリとの統合が予定されている(Impress Watchの記事)ようなので、 そのタイミングで、デジタル認証アプリがスマホ搭載のマイナンバーカードにも対応するといいなと思います。
※出典:デジタル庁「2025年デジタル庁活動報告」
ログイン
ログインの際も、同様にメールアドレス・合い言葉を入れて、同じくデジタル認証アプリとマイナンバーカードで認証するとログイン完了です。
パスキーの登録も可能となっており、登録しておくと生体認証のみでログイン可能です。 そのため、普段使いはパスキーでログインし、いざというときのためにマイナンバーカードを登録しておくという運用が推奨されています。
アイテムの登録
1Passwordと同様にアカウント情報や2段階認証のキー、メモを保存することができます。 私は1Passwordのシークレットキーと、1Password専用の2段階認証アプリとして使用しているAuthyのID・パスワードを登録しています。
以下はアカウント情報の入力画面です。 何かしらパスワードマネージャーを使ったことがある方であれば、特に違和感なく使えるかと思います。
また、今後はパスキーもPrivacoに保存可能になるとのことなので、Googleアカウントのような重要サービスのパスキーを、メインのパスワードマネージャーと別にバックアップでPrivacoに保存しておくのもアリだと思います。
終わりに
パスワードマネージャーのディザスタリカバリを実現する方法として、Privacoというサービスを紹介しました。
記事中でも書きましたが、マイナンバーカードを使ってアカウントにアクセスできることがPrivacoの大きな強みです。 アクセスできなくなると詰むパスワードマネージャーのシークレットキーを格納するバックアップ先として、これ以上ないほど適していると感じました。
1Passwordだけでなく他のパスワードマネージャーを使っている方も、シークレットキーのバックアップ先として検討してみてはいかがでしょうか。
最後に理想を言うと、1Passwordアカウント自体が各国の国民IDカードを利用してリカバリーできるようになると最高なんですが、現時点で日本法人がないらしいので難しいのかなと思います。